「医療のこと、もっと知ってほしい」(山岡淳一郎)①

医療の現状と魅力を伝える一冊

「医療のこと、もっと知ってほしい」
 (山岡淳一郎)岩波ジュニア新書

以前、安部公房の描く
常軌を逸した「病院」の物語を
掲載したことがありましたが、
今日は現実の医療の
最前線を取り上げた
岩波ジュニア新書です。
本書は、これから
職業選択を考えるであろう
中学生・高校生に向けて書かれた、
医療の現状を知り、
その職業としての
魅力を伝える一冊です。

「第1章 ドクターヘリ」
長野県佐久総合病院の
ドクターヘリについての
ドキュメントです。
ドクターヘリはTVドラマの世界だけの
ものではありません。
そして決して
華やかな舞台でもないのです。
過酷で厳しい労働条件の中で、
救急救命医療のために奮闘している
医療チームの姿が紹介されています。
医療の世界に興味がない方でも、
第1章を読めば
本書の魅力に引き込まれます。

「第2章 地域医療の最前線」
佐久総合病院のもう一つの顔、
地域密着医療についてのレポートです。
第1章の救急救命から一転して、
地道な地域医療の大切さと
そこで働く医療チームの
奮闘ぶりが記されています。

第1章・第2章から、
現代の医療は点ではなく、
つながりを大切にしていることが
わかります。

特に、医療は医師だけではなく、
看護師、介護士、薬剤師、
医療ソーシャルワーカー等の
様々な職種がチームとして機能して
初めて力を発揮することが
よく伝わってきます。

また、一つの病院だけでなく、
一次医療(患者が最初に接する医療)、
二次医療(専門性の高い
外来医療や入院医療)、
三次医療(がんや難病など
きわめて高度な専門性を有する医療)
を受け持つ医療機関が、
有機的に連携する必要性についても
理解できました。

「第3章 なぜ医者になるの?」
ここで佐久総合病院から離れ、
日本での医師養成課程の
現状について述べています。
特に、フィリピンでの
医師免許取得の方法と比較して、
日本の体制の問題点を指摘しています。

全編を通じて、
人間の命を預かる医療の
最前線の責任の重さと
そこに携わるスタッフの
充実した生き方が
ひしひしと伝わってきます。
自分が子どもの頃、
このような本と出会うことができたら、
私の人生は違ったものに
なっていたのではないかと
思うくらいです。
中学生、高校生の皆さん、
本書を読んで、
医療の世界をのぞいてみませんか。

(2018.11.19)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA